水面波のカオス


自由表面をもつ流体を入れた容器を水平方向あるいは鉛直方向に周期的に動かすと, その振動数(加振振動数)と共鳴関係にある固有振動数をもつ特定の水面波のモードだけが励起される. さらに,励起されたモードと共鳴関係にある別のモードも励起される可能性がある. このような場合,励起される少数個の水面波モードの振幅と位相についてのモデル方程式を作ることができる. この方程式は,粘性等による水面波の減衰効果を含めると,外力項と減衰項を含む非線形の方程式となり, パラメータの値によってはカオス解をもつ.このとき,各水面波モードの振幅は不規則に変動する.

その他に,長い水槽の一端に置かれた造波機の周期的運動と共鳴した水面波モードのカオス的時間発展や, 上下に振動する半没球のまわりにできる水面波のカオス的挙動なども知られている.

参考文献:

[1] 船越満明,「水面波の生成における非線形現象-カオス,ソリトン,共鳴現象-」, "乱れと波の非線形現象" (井上良紀・木谷 勝 編) 第2章,(朝倉書店, 1993)

[2] 船越満明 and 井上 進, 「水面波のカオス」, 日本物理学会誌, 第44巻, 第5号, (1989), pp.323-329.


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容器の水平加振によって励起される水面波のカオス

 円筒形容器内に水を入れ,それをある2つの水面波モードの固有振動数よりわずかに小さい適当な振動数で水平方向に加振すると,共鳴によって大きな振幅の波が励起され,カオスが見られる.上図は,この2つのモードの振幅と位相を決める4つの変数のカオス的時間発展を,これらの変数の中の2つによって張られる(4つの)2次元平面へ射影することによって示したものである.赤で示したものは,これらの4変数についてのモデル方程式の数値解であり,黒は実験において得られたデータである.

関係論文:

[1] M.Funakoshi, S.Inoue, "Surface Waves Due to Resonant Horizontal Oscillation", Journal of Fluid Mechanics, Vol.192, pp.219-247, (1988).

[2] M.Funakoshi, S. Inoue,"Bifurcations in Resonantly Forced Water Waves", European Journal of Mechanics B/Fluids, Vol.10, No.2, Supplement, pp.31-36, (1991).

[3] M.Funakoshi, S. Inoue,"Bifurcations of Limit Cycles in Surface Waves due to Resonant Forcing", Fluid Dynamics Research, Vol.5, No.4, pp.255-271, (1990).