点渦モデル


渦度は,速度場の rot によって定義され,流体の各微小部分の回転の角速度に比例する. 渦度は流体運動を考える上で重要な量であるが,とくに非粘性流体の2次元的運動においては, 流体の各微小部分が動くときに,その渦度は変化しないという性質をもつ. そして,ある限られた領域でだけ渦度が0 でないような場合には,その渦度分布を1点に渦度が集中したもので近似することがしばしば行われる. これが点渦モデル(あるいは渦糸モデル)と呼ばれるものであり,点渦の強さはこの領域内の渦度の積分値である.

点渦のまわりには速度場が誘起されるので,複数の点渦が存在する場合には,各点渦は,その場所に他の点渦によって誘起される速度で動かされる. 従って,点渦群の運動は,各点渦の位置に関する連立常微分方程式によって支配される. そして,この方程式はハミルトンの正準方程式の形に書けるが,非線形の方程式なので,充分多い数の点渦の集団を考えると, その運動はカオスになることがある.