パターン形成


流体系や化学反応系,生物系などにおいて,系が空間的な広がりをもつ場合に,ある条件の下で規則的な空間パターンの形成が見られることがある. この現象はパターン形成と呼ばれ,物理的・工学的に興味深い研究対象であり, 実験で観測される様々なパターンの形成やその不安定化を解明しようとする理論的研究が盛んに行われている.

良く知られているパターン形成の例としては,熱対流系における対流パターンがある. すなわち,平行な水平2平板間の流体を考え,下の平板の温度を上の平板よりも充分大きくすると, 下の平板付近の流体が暖められて軽くなることによる浮力の効果が,粘性による運動を抑えようとする効果よりも強くなり,対流運動が始まる. また,上端が平板でなく自由表面である場合でも,表面張力係数の温度依存性に起因する対流運動(マランゴニ対流)が起こる. これらの熱対流系で見られるパターンは,ロールと呼ばれる縞模様パターンの他に,4角形パターン,6角形パターンなどもある.

一方,水面波においてもパターンの形成が見られることがある. すなわち,自由表面をもつ流体を容器に入れて鉛直方向に加振すると, 加振振動数の半分の固有振動数をもつ水面波のモードがパラメータ共鳴によって励起され,これはファラデー波と呼ばれる. この励起される波の波長よりずっと大きな広がりをもつ容器を考えると,容器の側壁による影響は近似的に無視できる. この場合,ファラデー波の示すパターンとしては, 縞模様パターン,4角形パターン, 6角形パターンなどいろいろなものが考えられるが,その中の特定のパターンが選択される理由や, パラメータの変化に伴う各パターンの不安定化のメカニズムの解明が重要な研究テーマとなる.


関係論文:

[1] K.Yoshimatsu and M. Funakoshi, "Primary Patterns in Faraday Surface Waves at High Aspect Ratio", Journal of the Physical Society of Japan, Vol. 67, No.2, pp.451-461, (1998).