本分野の研究内容の概要については
本分野では,理論的解析と計算機シミュレーションを用いて,流体系,多粒子系,振動子が結合した系などの非線形力学系の示す挙動を明らかにし,それに関係したいろいろな工学的問題を解決していくことをめざしています。具体的には,水や空気などの流体の運動におけるカオス,流体の流れのさまざまなパターン,波や渦の複雑な挙動に関する研究や,薄膜成長・界面物性とその制御に関する研究などを行っています。
カオスとは,振動子系,流体系,電気回路等に対する多くの非線形モデル方程式で見いだされている不規則に変動する解のことですが,このカオスは実験でも数多く観測されている普遍的な現象であり,工学的にも重要な研究テーマです。
本分野では,流体の運動がどのような過程を経てカオスになるかを調べているほか,流体をカオス的に運動させることによって2つの流体を効率良く一様に混合する方法についても研究しています。また,多数の振り子をバネで結合したシステムも,建築物などのモデルとしてしばしば用いられますが,このシステムの示すカオス挙動とその抑制・制御の方法についても調べています。
さらに,容器に入れた流体を下から加熱すると,熱対流と呼ばれる運動が起こって,さまざまな流れのパターンが現れます。本分野では,このような熱対流による流れのパターンの特徴や,この流れによる流体のカオス運動と混合についても研究しています。
波は流体中に普通に存在し,風によって作られる海の波,山の風下側に見られる大気中の波(山岳波と呼ばれる),地震による石油タンク内の波など,さまざまな原因によって作り出されます。
本分野では,流体を入れた容器の加振,船の航行のような流体中の物体の運動,平らでない底地形の上の流体の流れなどによって作り出されるさまざまな興味深い波のパターンや,相互作用している波の示す複雑な振る舞いについて研究を行っています。
また,鳴門の渦潮のような渦運動も流体の重要な運動モードですが,本分野では,渦どうしの相互作用によって渦の合併・巻き込みが起こり複雑な渦構造が形成される過程や,渦のカオス的運動についても研究しています。
本分野では,理論的解析と計算機シミュレーションを用いて,流体系,多粒子系,結合振動子系などの非線形力学系の示す複雑な挙動の解明とその利用をめざす研究を行っている。また本分野では,対象とする人工物や自然界の示す複雑な挙動を的確にモデル化し,それを解くことによって挙動の本質を理解し問題を解決していく,という能力に優れた高いレベルの研究者や技術者を育成することをめざしている。
決定論的な方程式の不規則に変動する解であるカオスは,多くの非線形モデル方程式で見いだされているほか,実際の実験でも数多く観測されている普遍的な現象であり,工学的にも物理的にも重要な研究テーマである。本分野では,カオスの発生・特徴づけに関する理論,非線形力学系の理論,及びさまざまなモデル化の理論と数値計算,計算機シミュレーションを用いて,流体系や非線形結合力学系の示すカオス,分岐,同期などの非線形現象の解明をめざしている。 また,カオスを有効に利用する応用的研究として,流体をカオス的に運動させることによる流体の効率的な混合について調べ,力学系の理論などに基づいた混合効率の定量的評価法について調べるとともに,管状ミキサーや撹拌槽等の混合装置に関する有用な設計指針を得ることをめざしている。
水面波などの流体中の波動は,山の風下側に見られる大気中の波(山岳波),地震による石油タンク内の波など,さまざまな原因によって作り出される。これらの波の挙動の中には非線形のモデル方程式を用いないと説明できないものも多く,それらは非線形波動と呼ばれている。 本分野では,特異摂動法やソリトンなどの非線形波動に関係した理論,力学系の理論,及びさまざまな数値計算,数値シミュレーションの手法を用いて,ファラデー波やスロッシング波などの流体を入れた容器の加振によって作られる波や,流体中の物体の運動によって作られる波の示す,カオス,分岐,非線形相互作用や多様な波動パターンの形成などの非線形挙動について研究を行っている。
また,鳴門の渦潮や流れの中に置かれた物体の後方にできるカルマン渦列で代表される渦運動も流体の重要な運動モードであるが,本分野では,強い非線形性をもつ複雑な過程である渦の相互作用やそれに伴う新しい渦構造の形成,構造物の破壊の原因となり得るカルマン渦列の抑制などについて,流体運動の安定性や渦力学の理論及び数値シミュレーションを用いて研究している。
流体を入れた容器を下から加熱したときに生じる熱対流は,規則的な空間パターンの形成や定常対流の分岐,カオスなどの興味深い非線形挙動を示すだけでなく,工学的にも重要な研究テーマである。本分野では,流体運動の不安定性や分岐に関する理論,及びさまざまな数値計算手法を用いて,容器内の熱対流運動の不安定化に伴う対流パターンの発生と分岐,定常対流中の粒子のカオス運動などの現象の解明をめざしている。