平らでない底面の上を流れる流体における波の生成


局在した盛り上がり(山)やへこみ(谷)をもつ底面の上をある流速で流れる流体を考える. この流速がある長波長の波の速度に近ければ, 山や谷のところで作られたこの波が上流側へ伝搬しようとする速さと波が流れによって下流側へ流される速さがほとんど相殺されるため, 波は長時間山や谷の付近にとどまり,大きな振幅の波に成長する.

このような状況での波の挙動のモデル方程式として,forced K-dV 方程式がよく知られている. この方程式は,長波長の水面波に対して使われることが多いが, その他に,密度が鉛直方向に変化している成層流体中の波である内部波に対しても用いることができる[1].

また,少し複雑な場合として,成層流体中に共鳴相互作用する長波モードと短波モードが存在するときを考えると, 流れの流速が長波モードの速度に近いときには,山や谷のところで生成される波の挙動は,forced long-short interaction equation と呼ばれる方程式によってモデル化される[2][3].

関連論文:

[1] 船越満明,「水面波の生成における非線形現象--カオス,ソリトン,共鳴現象--」 "乱れと波の非線形現象" (井上良紀・木谷 勝 編) 第2章,(朝倉書店, 1993).

[2] M.Funakoshi, "Interaction and Generation of Waves in a Two-Layer Fluid Flowing over Localized Bottom Topography", Dynamics of Atmospheres and Oceans, Vol.23, Nos.1-4, pp.267-277, (1996).

[3] M.Funakoshi,"Steady Trapped Solutions to Forced Long-Short Interaction Equation", Journal of the Physical Society of Japan, Vol.62, No.6, pp.1993-2006, (1993).


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山の上を流れる流体における水面波の周期的生成

底面に局在した盛り上がり(山)がある場合に,その上を流れる自由表面をもつ流体の流速が長波長水面波の速度に近いと, 山によって作り出される波の挙動はforced K-dV 方程式によって良く近似される. この方程式を数値的に解くことによって,山の付近での周期的な水面波の生成が示せる. 上図のxは水平方向の座標であり,下に小さく書いた図は底面の形をあらわす. 上側の図における各曲線は,いくつかの時刻における自由表面を縦方向にずらして表示したものである. 山の付近に,盛り上がった水面波が周期的に作り出され,それが上流側(左側)へ向かって次々と放出されることがわかる. この放出される波は,流れの流速が長波長水面波の速度よりも少しだけ大きいときには, 浅水波ソリトンによってよく近似される.