カオスとその利用・制御に関する研究


カオスとは,決定論的な方程式(ランダムな雑音などの項を含まない方程式)のもつ,初期状態に敏感で不規則に変動する解のことであり, 振動子系,流体系,電気回路等に対する多くの非線形モデル方程式で見いだされている. このカオスは,例えば非線形振動子に周期的な外力を加えたときにも現れ,規則的な入力に対する不規則な応答として興味深い. さらにカオスは,実際の系で数多く観測されており, その挙動の複雑さと挙動予測の困難さから, 工学的にも重要な研究テーマである.

本分野では,計算機シミュレーションや,カオスの発生メカニズム・特徴付けに関する理論,非線形力学系の理論, 解の分岐(方程式中のパラメ-タの変化に伴う解の定性的性質の変化)の理論を用いた解析によって, 流体系,結合振動子系等の非線形力学系のカオス挙動の解明をめざしている. 具体的には,規則的な外力の下での水面波のカオスや,流体中の渦運動に伴うカオス, 定常流あるいは時間周期流の中での流体のカオス運動である ラグランジアンカオス, さまざまな結合振動子系・結合写像系での時空カオスなどについて研究を行っている.

さらに「カオスを積極的に利用する」,あるいはその逆の「カオスを抑制・制御する」という立場からの研究も行っている. カオスを利用する研究としては,流体のカオス的運動を利用して2つの流体の効率の良い混合をめざす カオス混合や, カオス的運動による物質の輸送の促進の問題などを調べている. 一方,カオスはその挙動の複雑さ・予測困難さから,工学的には好ましくないと考えられる場合も多いので, 本分野では,結合振動子系・結合写像系などの多数の要素が結合した非線形系について, それの示すカオスの抑制・制御の方法の研究も行っている.

参考文献: